NBAファンの間で今最も注目を集める選手のひとり、オクラホマシティ・サンダーのシェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手。2025年シーズンには、チームをフランチャイズ史上初のNBAチャンピオンへと導き、レギュラーシーズンMVPとファイナルMVPの二冠を達成しました。Netflixのドキュメンタリーシリーズ『Starting 5』シーズン2では、その特別なプレーオフでの軌跡が描かれています。

しかし、その栄光への道のりは決して平坦ではありませんでした。物語は、ロサンゼルス・クリッパーズ時代から始まります。


「最初のシーズンは最高だった」

シェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手:

"It was a great first season with the Clippers. We blew expectations out of the water. We were not supposed to be very good. We ended up making the playoffs."
「クリッパーズでの最初のシーズンは本当に素晴らしかったです。誰も僕たちが強くなるとは思っていなかったのに、下馬評を覆してプレーオフに進出できました」

2018年ドラフトでクリッパーズから12位指名を受けたギルジャス=アレクサンダー選手。わずか1年目にしてスターターの座を掴み、当時の王者ゴールデンステイト・ウォリアーズを相手に2勝を挙げる快進撃を見せました。当時、誰もが彼がチームの未来を担うポイントガードとして成長すると期待していました。


「通知が3回きたんだ」—— エージェントが明かす転機の瞬間

そんな中、2019年7月。彼のキャリアを大きく変えるニュースが立て続けに飛び込んできます。

シェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手:

"I was getting ready to go Summer League to work out with the team."
「僕はサマーリーグに向けてチームと一緒に練習する準備をしていたんです。」

ギルジャス=アレクサンダー選手のビジネスマネージャー、サイモン・ゲブレルル氏が当時を振り返ります。

"I'll never forget, we're all on the phone together. I get the drop-down notification — 'Kawhi Leonard agrees to sign with the Clippers.' We were celebrating. Then another — 'Paul George to the Clippers.' We're like, 'Paul George, Shai, and Kawhi. You guys have a new big three! You guys are the best team in the NBA at this point.' We're celebrating. We're yelling on the phone. Then the next one: 'Shai Gilgeous-Alexander has been traded to the Oklahoma City Thunder.'"
「あの瞬間は忘れられません。僕らは電話で話していて、『カワイ・レナードがクリッパーズと契約』という通知が来て大喜びしたんです。続いて『ポール・ジョージがクリッパーズへ』。『ポール・ジョージに、シェイに、カワイ。新しいビッグスリーの誕生だ!これでNBA最強のチームになる』って、もう大興奮で電話口で叫んでいました。でも次の通知で、『シェイ・ギルジャス=アレクサンダーがオクラホマシティ・サンダーへトレード』と出たんです。」

祝福の瞬間から一転、衝撃のニュースが飛び込んできました。しかし、ギルジャス=アレクサンダー選手はすぐさま顔を上げました。

サイモン・ゲブレルル氏:

"It was kind of like a punch in the gut… but Shai was like, 'it's all good.' He turned it into a positive. The next morning, he went to the gym — and didn't leave for a month."
「最初はショックでした。でもシェイはすぐに『大丈夫、前向きに行こう』って切り替えたんです。翌朝にはもうジムに行って、1か月間、ほとんどジムにこもりきりでした。」

「もう一度、自分を証明しようと思った」

シェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手:

"I didn't see it coming. I just remember thinking to myself, I had proved to the Clippers organization that I was worth the pick… Okay, now I have to redo it all again with the Oklahoma City Thunder."
「まったく予期していませんでした。ただ覚えているのは、心の中でこう考えたことです。『クリッパーズには、自分がドラフト指名に値する選手だということを証明できた。よし、それなら今度はオクラホマシティ・サンダーで、もう一度すべてをやり直さなければ』と。」
"I wanted to make sure Oklahoma City felt like they won the trade… to flip the script."
「オクラホマが『このトレードで勝ったのは自分たちだ』と感じてもらえるようにしたかったんです。状況を完全にひっくり返すために。」

その言葉通り、ギルジャス=アレクサンダー選手は移籍後すぐにチームの中心となり、やがて2025年シーズンにレギュラーシーズンMVP、そしてファイナルMVPへと上り詰めました。


「クリッパーズ戦では、いつも以上に気合が入る」

シェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手:

"The Clippers came into town, and I would be lying to you if I tell you I don't get up to play the Clippers every time… For obvious reasons."
「クリッパーズが相手の試合では、正直に言えば、いつも以上に気合が入ります。その理由は、言うまでもありません。」

古巣への複雑な想いを胸に、彼は今やリーグを代表するクラッチプレーヤーとして君臨しています。あのトレードがなければ、現在のシェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手は存在しなかったかもしれません。彼が示した「逆境を力に変える自信」は、NBAキャリアの象徴そのものです。


出典 / Sources:

Netflix『Starting 5』シーズン2
Tomer Azarly, ClutchPoints
元記事: https://clutchpoints.com/nba/oklahoma-city-thunder/thunder-news-shai-gilgeous-alexander-opens-up-on-clippers-trade-in-netflixs-starting-5