2019年7月に当時フリーエージェントだったカワイ・レナードと契約したことは、ロサンゼルス・クリッパーズにとってフランチャイズ史上トップ5に入るほどの大きな出来事だった。以来、良くも悪くも、チームの成否はレナードの健康次第というシーズンが続いている。
しかし、ここに来て、レナードの健康以上に大きな問題が浮上してきた。クリッパーズがスポンサー契約を交わしている企業を介し、レナードに報酬を支払う手配をしたのではないかという疑惑が出てきたのだ。しかも単なるスポンサーというだけでなく、クリッパーズのオーナー、スティーブ・バルマーはその企業に出資もしている。もし疑惑が真実だったとしたら、NBAのサラリーキャップ・ルールを回避する行為とみなされ、リーグから大きな制裁を受けることになるだろう。
この疑惑が発覚したのは現地9月3日。元ESPNレポーターで、現在はポッドキャスト『Pablo Torre Finds Out』で発信し続けているジャーナリストのパブロ・トーレが、いくつかの証言をもとにその疑惑について報じ、それを受けてNBAも調査に乗り出した。
クリッパーズとバルマーはこの疑惑については全面否定しており、現時点では決定的な証言や証拠があるわけではないが、これまでに明らかになった事実を総合すると、疑われても仕方ない状況であることは確かだ。バルマー自身、「もし他のチームに同じような疑惑が出てきたらどう思うか?」と聞かれ、「リーグには徹底的に調査してほしいと思うだろう」と答えている。そして今回のリーグ調査についても、潔白を証明するためにも「歓迎する。隠すことは何もない」と断言した。
しかし、そうコメントした後に新たな事実も浮上してきており、疑惑は深まるばかりだ。まだ黒とも白とも断定できない状況で、リーグ調査の結果待ちだが、まずは状況を整理してみよう。
疑惑①
問題となったのは、クリッパーズとパートナーシップ契約をしていた会社、アスピレーションがカワイ・レナードとスポンサー契約を交わしており、アスピレーションで財務を担当していた元社員が、「社内ではサラリーキャップ回避のための支払いだと言われていた」と証言していることだ。
トーレはアスピレーションの内部書類や複数の元社員との会話をもとに、バルマーがアスピレーションに5,000万ドルの出資をしていること、レナードとアスピレーションの契約が4年2,800万ドルと、アスピレーションが他の有名人と交わしたスポンサー契約と比べてもかなり高額だったこと、レナードがアスピレーションのために宣伝活動をした形跡がまったくないこと、契約にもレナードが望まない宣伝活動は拒否できると明記されていることなど、疑惑の根拠となり得る状況をいくつも報じている。また、その後の報道で、アスピレーションの共同創設者の1人であるジョー・サンバーグからレナードに、アスピレーションの株2,000万ドル分が譲渡されていたことも判明している。
疑惑②