スモールマーケットのチームはいかにして王者になったのか。
サム・プレスティGMがオクラホマシティの“限界”を強みに変えた哲学とは。
カルチャー、謙虚さ、そして「次のページをめくる力」。
現地で取材するYOKO Bがサンダー成功の裏側に迫る。

2024–25シーズン、オクラホマシティ・サンダーは、本拠地移転後初となる優勝を果たした。

多くの人々は、その成功をゼネラルマネージャー（GM）であるサム・プレスティの卓越した戦略ゆえだと語るだろう。確かに、今のシェイ・ギルジャス・アレクサンダーを中心としたチームがあるのは、彼の見事な手腕によるものに他ならない。

しかし、人事面や財政面といった表向きの戦略だけを見ても、サンダーの持続可能な成長の理由や昨季の成功は説明しきれない。なぜなら、トレード、フリーエージェント（FA）、ドラフトを通してどれほど優秀な選手を集めたとしても、必ずしもそれが成功につながるとは限らないからだ。

だとしたら、サンダーの成功の裏には他に何があるのだろうか？

実際に現場を取材して見えてくるのは、このチームには明確な価値観と組織文化が根付いており、全員が共通認識を持って行動しているという事実である。

 “The NBA is not a chess game, it's a poker game.”：与えられた環境でどう戦うのか

「NBAはチェスではない。ポーカーなんだ」

ブルックリン・ネッツのショーン・マークスGMがサンダーを参考にしていると語ったことを受け、プレスティGMはNBAにおけるチーム作りをポーカーに例えた。

チェスでは全員が同じ駒を持ち、すべての情報が見える。だが、NBAにおいて各チームの条件は同じではない。「各チームは異なるカードを持ち、強みも限界もそれぞれ違う」と、プレスティGMは言う。

ここでの「カード」とは、単に選手やドラフト指名権を指すわけではなく、各都市の経済力や文化、歴史的背景など地域的な要素も絡んでくる。サンダーのようなスモールマーケットのチームには、FAで即戦力を獲得する都市としての魅力も、スターを引き留める資金も限られている。しかし、プレスティGMはそれを「限界」で終わらせない。